::: 作品紹介 :::

::: 2005/11/26 :::


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日記ほっぽってた理由の半分。もう半分は江戸もの(笑)
 
 所用故、川沿いの料亭吉兆にて待つ。 小次郎
              

 
 そろそろ日も傾きかけた頃慶一郎が屯所にて机に向かっていると近所の子供が文を届けてきた。
「前髪がいっぱいある兄ちゃんに頼まれた」
 そういって文を渡される。慶一郎は懐から小銭を取り出すと駄賃として手渡す。
「菓子でも食べるがいい」
 その言葉に始終おどおどしていた子供に笑みが浮かぶ。ありがとう。と小さく言って子供は足早に屯所からさっていった。
 早速文を広げると、細い文字で前述の一文があるのみだった。
 丁度仕事も終わる頃であるし件の料亭ならさほど遠くない。何故文を使って呼び出されたのか。疑問に感じながら大小を腰に差した慶一郎は足早に向かった。



 吉兆は酒と料理がうまいと評判の場所で、隊員も金の工面ができたものはこぞって行きたがった。特に今の季節は牡丹肉を使った鍋が熱燗に合う。
 考えると臓腑が飢えを覚えたがまずは小次郎殿に話を聞いてからだ。
 吉兆についた慶一郎は出迎えた女中に奥座敷に通される。途中庭先に大きな鳥が松に止まっている。目線を向けると翼を広げ飛び去った。気になるが小次郎のいる部屋についたのでそれ以上追求はしなかった。
「お連れさんが見えられましたえ」
 障子越しに女中が声をかけると、中から「入ってくれ」と聞こえた。
 障子を開けた中には羽織を横に置いた小次郎が一人静かに座して待っていた。慶一郎が会釈をしながら中へはいると小次郎は銚子を二本と料理を頼む。女中は頷くと部屋から遠ざかった。
「さあ、まずは座ってくれ」
 小次郎の促されるまま慶一郎は対面に座る。
「すぐに飯も来るだろう」
「はい。ところで所用とは」
「そう急かすな。ふふ慶一郎殿らしい……実は地獄門に関して情報が手に入ったのでな」
 なぜか小次郎……いや香織は目を細めて微笑む。だが慶一郎には地獄門の事に集中した。
「して、どのような事でござるか」
 その先を促そうとした時に先ほどの女中が酒と飯を持ってきたと障子越しに声をかけてくる。
「入ってくれ」
 香織は女中に声をかける。地獄門の話は秘密となっている。女中の前で続ける事もできず慶一郎は女中が出て行くまでお預けを食らった。
 対して香織は慶一郎の苛立ちをものともせず出された料理を前にして嬉しそうにしていた。その様子に慶一郎は苛立ちを募らせる。
「別に私は逃げぬ。先に食べよう。この酒はうまいぞ」
 香織は苛立ちの募った慶一郎を楽しんでいるように見えた。気に入らぬ慶一郎であるが香織がそういうならと気持ちを落ち着け食事にする事にした。
 香織が銚子を持ち、慶一郎に御猪口を持つように促す。軽く持ち上げたところに香織が温めの酒を注ぎ込む。口に付けるとほどよい辛みが舌を刺激する。喉ごしも良い。一飲みで空にすると香織は嬉しそうに二杯目を注いだ。
「旨いだろう。慶一郎殿の好みだと思ってな。今日は酒に合うように軽いものを頼んだが食べてみてくれないか」
 眼前には湯豆腐が湯気を立てている。つゆのそばには薬味も添えてある。確かに実直な味を好む慶一郎にとって御馳走である。
「では馳走になります」
「ああ、私も楽しみだ」
 箸で一口大に切った豆腐に端に少しだけつゆをつけ口にする。口の中でとろける豆腐に辛口の酒がよく合った。
 そろそろ日を追う事に朝晩の冷え込みが増してくる。このような体の芯から温まる料理は何よりの馳走になる。
 箸は進み、いつの間にか皿の中身はすべて平らげていた。香織も同様だ。なんだかんだいってもやはり腹は空いていたようだ。
 香織殿に感謝せねばならないな。箸を置いた慶一郎は香織に感謝の言葉を告げる。
「馳走になりました」
 香織は笑みを絶やさずに
「いや、いいんだ。それよりも腹がいっぱいになったら眠たくならないか」
と聞いてきた。
 確かに食事の後は眠気が起こるものだがそんなに早くくる物ではない。
「いいえ。まだそんな……時刻……」
 そう言い返していると急に香織殿の顔がぼやける。疑問に思う前にすべてはもやに包まれた。




 慶一郎が目を開くとそこは薄暗くあるが先程の一室であった。朦朧とした意識で起きようとしたのだが腕が動かない。酒に酔ったにしては力を込めてもすんともせぬ。見れば手と足はそれぞれ縄で縛られて布団の上に丸太のごとく転がされている。
「気が付かれたか」
 行灯の側に佇んでいた香織は笑みを浮かべながら声をかけてくる。朦朧としてもだれの仕業か程度の判別はつく。慶一郎は睨んだ。
「一服盛りましたね。悪ふざけにしては質が悪いですぞ」
「ふざけてなどいないさ」
 ずっと笑んだままの香織にようやくいつもと様子が違う事に気付いた。目がまったく笑っていないのだ。
 瞳の冷たさに慶一郎の背中に悪寒が走る。
「地獄門に関して話があると言っただろう」
「それが拙者を縛り上げるのと、どこに関連があるというのですか」
 睨み続ける慶一郎に香織は冷たい作り笑いから無表情になる。
「この先こうでもせねば嫌がるだろうからな。先手を打たせてもらった」
 そう言いながら寝ている慶一郎に近寄ると脇に座り込む。そして慶一郎の下腹部を着物越しからそっとなでる。驚いた慶一郎は声を荒げる。
「何をしているかお分かりか!」
 なでている反対の手を使い耳を塞ぐ真似をする。目を細めた香織はあくまで平常と同じ口調でつげる。
「大きく声を出さずとも聞こえている……そんな事だから他の女子供に無駄に怯えられるのだ。こうして……玉茎をなでている時ぐらいもう少し優しくてもいいだろうに」
 一息で言い切った香織に慶一郎は愕然とした。普段の香織なら慶一郎が言わせようとしても頑として局部の名など呼んだりせぬ。しまいには恥ずかしさのあまり慶一郎に向かってむくれるほどである。
 今の香織には恥じらいなど全くない。ふてぶてしささえ感じる。
 戸惑を隠せぬ慶一郎に香織はなおも着物越しの愛撫を続ける。
「あら、元気になってきたようだな。頭とは違って玉茎は素直なことだ」
 くすりと笑いながら愛撫され続ける。何よりこの緊縛された状態に恥ずかしさが込み上げてくる。
「とにかく……おやめ頂きたい」
 照れのまじった口調で諌めるが香織の耳には入らぬようだ。いや聞いていたのだが故意に意味を取り違えたらしい。
「お気にいらぬか……残念だ」
 といった香織は腕をそろそろと蛇が這うがごとくへそから胸の辺りに移動させる。襟元より手を差し入れる。手首までいれなでる。そのうち物足りなくなったのか深く差し入れるため胸全体が晒されるほどに襟を開ける。
「なっ」
 晒された胸板に香織は顔を寄せる。両手で触れながらところかしこに唇を押し当てた。
「ふふふ。逞しいな……」
 慶一郎の顔を伺いながら時折舌先を突き出して軽く触れる。柔らかな感触がむず痒い。そのうち指先が慶一郎の胸板に小さく付着している乳首に触れる。香織の細い指先で弄られると抗うように固くなる。
「殿方でも固くなるのだな」
 そうつぶやいた香織は舌先で転がし始めた。
 慶一郎は眉をしかめ無言で耐える。
「いつも私にされるようにしているのに……気持ちよくない?」
 声を上げぬ慶一郎に香織は首をかしげながら女言葉で問う。
「少なくとも拙者は好みませぬ。それよりも戒めを解いてくだされ」
 悪くない感触ではあるが素直に認めるわけにもいかない。顔色を変えずに答えると香織は興味を失ったようだ。「そう」と短く告げると次の手を考え始めた。それには慶一郎の忍耐もきれかける。怒気をはらみつつ言う。
「いい加減にしてください。これ以上は許しませぬぞ」
 悪びれぬ香織は予想どおりといった様子だ。
「だから縛ったというのにな……」
 首をすくめた香織は言葉を続ける。
「先刻、常世の者と逢うたのだ」
「なんですと」
 その言葉に今の状況も忘れ食い入るように見つめる。
「梟が傍らに付き添うてな。大きな目で私を見据えるのだ」
 よくよく見れば愛嬌のある顔であったと嬉しげに話す香織に苛立ちが募る。それを見定めた上で香織は焦らした。
「続きはまた後で」
 茶目っ気を含んだ顔で言い張ると香織は慶一郎の袴の紐に手をかける。慶一郎の制止は意味をなさない。一文字に結んでいる紐を手早くほどくと木綿作りの六尺が姿を表す。六尺の中身が心持ち膨らんでいる。
「やはり心地よかったのではないか?」
 香織に指でつつかれながら言われると慶一郎は重ねて恥ずかしさが込み上げる。慶一郎の再三にわたる制止にもそれが現れた。
「珍しい。慶一郎殿も恥ずかしがると言うことがあるのだな」
「……人を何だと思っていたのですか」
 香織は口元に笑みを浮かべるだけで答えない。慶一郎は答えを聞くことをあきらめ首をうなだれた。
 香織は慶一郎が黙ったのを幸いにきつく結ばれた六尺を取り外しにかかる。それにはもちろん慶一郎も抵抗するのだが文字どおり手も足も出ぬ状態では無駄となる。
 香織の手で慶一郎の意識とは離れた生き物が六尺より跳ね起きる。随分と活力がある様子が己の事ではあるが憎らしい。
「これなら楽に事を進められそうだな」
 そう呟いた香織は細い指を玉茎に絡め上下に扱き始めた。大きさはさほど変わらぬが硬度は時を経つほどに増した。続いて顔を近づけ亀頭のくびれを丹念になめ始める。
「なぜです……情交を望むなら縛り上げぬでもできるではありませぬか」
 刺激に耐えながら慶一郎は問う。が香織はまたも答えず、今まで慶一郎が仕込んだ手管をすべて使い扱き続けた。限界のきた慶一郎は香織の熱い口中に精を放つ。香織は嬉しそうにすべて受け止めた後、舌の上に集め慶一郎に見せびらかす。そうして喉を鳴らしながら飲み込んだ。鈴口に残った精も丁寧に吸い出した。
 慶一郎には放出後特有の疲労が残る。だが縛られたためか疲労の度合いが半端ではない。加えて朦朧とした意識はさらに混迷の度を増していくようだった。
「今日も濃いこと……だがこれでは足りぬと常世が囁くのだ。それこそ精も根も果てるまでいたせとな」
 香織は口を放し答える。
「常世が囁く……何を……おっしゃるのか……」
 白濁した意識の慶一郎にはこう呟くのが精一杯だった。
「申しただろう。常世の者と梟に出会うたと。あれらは死を運ぶ者。常世の思念を運ぶ者。常世は死人も、死を増やす手足も欲している。我らはそれに選ばれたらしい。思念の通じた者と肌を合わせた者は常世の声が聞こえるようになると梟がいうでな。こうしているのだ」
 香織は精を放ったばかりの玉茎に再びむしゃぶりついた。香織の言葉は朦朧とした意識下ではにわかに理解しきれぬ事だ。
「常世……肌を合わせる……梟……」
 慶一郎が香織の言った言葉を所々復唱しながら必死に理解しようとする。
「考えなくても良い。今はただ私と交われば……常世の声が聞こえるまでな」
 香織は慶一郎の玉茎を刺激しながら頃合いを見計らって器用に己の袴を脱いだ。単衣は脱がず着流しの状態になると手を止め慶一郎の腰の上にまたがった。驚く事に下着は着けていないようだ。慶一郎の再び固くなった玉茎を握ると自らの玉門にあてる。そしてゆっくりと腰を下ろした。香織の玉門は燃えるような暖かさと潤沢な蜜で慶一郎の玉茎を包み込む。
「相変わらず太いですね……入れるのに一苦労っ……んん」
 それでも根元まで深く迎え入れた香織はゆっくりと腰を上下に動かし始める。
「どうです。たまにはこういうのも良いでしょう?……」
 嬌声をあげ腰を動かしながら香織はいう。
 だが混濁した慶一郎の耳には入らない。今はかろうじて香織の責めに時折声を上げながら耐えている。
「くぅっ……香織……やめ……ぐあぁ」
 前後に動きを変え激しく腰を使う香織に慶一郎は翻弄される。
「固く……暖かくて、ああっ凄いっ。奥に……奥に当たるぅっ」
 腰の動きを続けながら香織は呟く。さらに刺激が欲しくなったのか己の胸を着物の上から両手で揉み出し始める。それで飽き足りず襟を大きく広げ胸を出すと直に乳房を揉み始める。白い肌に指の跡が残るほど強く揉んでいた。
「ほら……慶一郎殿が、凄い……からこんなに乳が張ってしまうの」
 慶一郎の顔に胸を近づける。
「ねぇ、吸って。いつものようにぎゅっと」
 慶一郎の頭を両手で抱え持つと首を傾げさせた。慶一郎に拒む力は無く口元にある乳首を口に含み吸い始める。こりこりとした感触の乳首を舌で転がす慶一郎の鼻腔に雌の香が立ちこめる。
「そう、んっんん……そうよ。いい」
 玉門より蜜を滴らせ、精を吸い付くさんと腰をふるう香織に慶一郎はされるがままとなる。
 慶一郎に限界が近づく。苦悶の表情を浮かべ耐える慶一郎の様子で香織は果てる時が近いのを察したらしい。
「中に……出してっ」
 腰を密着させ慶一郎の射精を促す。玉門が蠢ききつく玉茎を締め上げるとたまらず慶一郎は香織の体内に精を放った。
 すべて出し終わるとまたも強烈な疲労感が慶一郎を襲う。
 しかも香織の体内は先ほどまであれだけ燃えるような熱さだというのに射精した瞬間すべてが凍り付くような冷たさが玉茎より体に入り込む。
(これが……この異質なものが常世の……)
 下半身を中心に冷気が広がる。
「どう……常世の気は気に入るかしら」
 慶一郎の様子を伺いながら香織は立ち上がる。拍子に慶一郎の玉茎は引き抜かれ、体内により白い白濁したものや蜜の入り交じった体液が溢れた。
 指で玉門を広げ慶一郎に体中がよく見えるようにした香織はさもおかしそうくすりと笑いながらに言った。
「ねぇ。ほら見て……こんなに沢山……」
 濃い紅色に彩られた体内を白い精液が汚している。液体は玉門より今も体外に流れ続けていた。
 慶一郎はかつて無い香織の痴態を目の当たりにし驚愕すると共に興奮する。香織の指先を見つめ続けた。
 だがそれは香織の計略らしい。気を散らしてしまうとそれだけ常世の気に蝕まれ易くなる。
 香織の策に乗せられかけた慶一郎だが大事に至る前に気づき常世の気を抑えようとする。
 香織は一通り見せつけた後着物の乱れを整える。懐紙で汚れをふき取ると慶一郎を見つめる。
 慶一郎はぴくりとも動けない。下半身からくる冷気を押さえようと丹田に力を込めるがあまり効果はない。
「そろそろか……慶一郎殿と共にいく道はさぞ楽しかろうな」
 香織が嬉しげに呟いた時、部屋の外より物音がする。香織が障子を開けると闇夜に二つ金色に輝く光が浮かんでいた。見れば梟の瞳であった。ばさりと音を立て香織に近寄り縁側に降り立つ。
「さあこちらへ」
 香織が手招きすると障子の隙間を二本の足で器用に歩きながら部屋へ入る。そこを香織が優しく抱き抱え、いとおしむように頭を撫でた。
 梟は一声鳴く。
「ご覧の通り、もうすぐ常世の声が聞こえるようになるだろう。それまではちゃんと近くにいるのだ、ナギ。そうせねば声が……届かなくなるのだから」
 香織は頭の辺りの羽根に軽く指を絡めながら答えた。こそばゆいのかナギと呼ばれた梟は頭をふり、羽根の流れを整える。ナギは先程よりやや小さめで鳴くとそれに再度香織が答えた。
「心配せずともよい。慶一郎殿はあの状態だ。これでまだ足りぬのであればまた交わればよいだけだ。私が気を遣らぬ限り常世の気は慶一郎殿の体内に流れ込むのだろう?」 
 ナギは肯定だといるように鳴く。
「なればもう少し待つがいいでしょう」
 そう言いながら香織はナギの羽根を愛撫した。ナギもまんざらではないようで静かに身を任せていた。
 一方の慶一郎は体内を蝕む常世の気を抑えようとしながら、香織の言葉をわずかだが耳にしていた。通常のように働かぬ頭でも情交の最中ではない。今は多少の余裕がある。視線のみ香織に向けると打開策を考える。
(あの梟が……気を遣らぬ限り……意識を無くせば) 
 何にせよ縛られた状態では常世の思念にいずれ心をも蝕まれる。まずは身体の自由をどうにかせねばならない。自力で縄を外すことはできぬ今香織に外させる方法を一つだけ思いついた。しかしそれは何とも分の悪い賭けである。賭事など好まぬが致し方ない。
 慶一郎は全て享楽に身をゆだねた真似をする。香織の名を繰り返し、情事をねだる。
 香織はその声に応え再び慶一郎の側によると顔を近づける。
 ナギは部屋の隅に飛び移り二人の動向を眺めていた。
「香織……足りぬのだ……もっと……もっと貴方を……」
 そう呟くと香織は嬉しそうに頷く。
 あでやかであるが邪気の感じる笑みを浮かべ香織は慶一郎の傷のある頬を一撫でした後唇を傷に押し当てた。
「ええ、慶一郎殿の望むまま……如何様にでも」



 単衣を脱ぎ全裸になった香織はまたも慶一郎の腹の上に乗る。今度は慶一郎の下半身に向け座ったため慶一郎の眼前には香織の尻で埋め尽くされた。
 香織は玉茎に頬ずりすると手を添え扱く。ふっくらとした唇を用いて睾丸を軽く吸い、筋を舌で丹念になぞる。今度は睾丸を攻めることにしたようだ。
 玉茎は両手で雁首と鈴口を刺激する。重点的に慶一郎の急所をつく攻めに玉茎は力を取り戻しつつある。
 香織も嬉しいのか眼前の玉門よりじわりと蜜があふれしたたる。慶一郎は頭を動かし玉門に舌を這わせる。蜜をすすると香織からあえぎが漏れた。ひくつく玉門に舌をねじ込みながら手を解放するよう香織に伝える。当初香織は話に乗らなかった。
「もっと触れていたい……それだけです。良いでしょう?」
 そう付け加えると香織も口だけでは足りぬ様子で心が動いたらしい。ナギにちらりと視線を送る。
 部屋の隅で二人を凝視するナギはホゥと短く鳴いた。どうやら危険はないとふんでの承諾の合図のようだ。
 香織は立ち上がり慶一郎の手足の紐を解いた。四肢の先端はしびれをおこしている。指を動かし異状が無いか確認した。動かすこと自体は可能だが常世の気に冒されたこの身は力で香織を撥ね除けることはできそうになかった。
 その間にも香織は正面より慶一郎の首に腕を回し、体をすりよせる。
 香織の胸が慶一郎のそれに密着する。柔らかな圧力が心地よいがここで香織に溺れてはならぬ。残り少ない意識を保つために努力しながら次の策に移った。
 慶一郎は手を玉門に寄せ、指でかき回した。玉門は喜ばしげに指をきゅうきゅうと締め付ける。
「あっ、ああっ……」
 慶一郎の首にしがみつきながら香織はあえぎを繰り返した。時には慶一郎の耳朶を唇で甘く噛みつつ吐息交じりにねだった。
「堪らない……早く中にきて」
 慶一郎は香織を己の体から離し布団の上に横向きに寝かせる。香織の後ろに密着すると玉茎を手で持ち玉門にあてがい、擦る。雁首に蜜を絡みつける行為は香織には焦らしにとられたようで、甘い声で催促してきた。
 慶一郎はその声を機に玉門ではなく後ろの菊門にあてがい力を込めて挿入する。
「いやぁ! そこは違うっ……あ゛あ゛っっ」
 慶一郎は香織の非難を無視した。 皺の一つ一つが玉茎の大きさに合わせ伸びる。いれてすぐの場所で固い肉の壁にぶつかるがかまわず進める。
「力を抜くように……裂けてしまいますよ」
 慶一郎は余り役に立たぬ忠言を発する。
 強烈なしまりの中、強引に突き入れる。香織の腕が慶一郎に伸びるが後ろにいる慶一郎にすぐに掴まれた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あああっっっ」
 菊門に関しては前戯もせず挿入するのだから相当な衝撃に違いない。だが慶一郎は止めない。根元まで挿入すると振幅を始める。
 香織の悲鳴をよそに慶一郎は己の体に鞭打って腰を動かす。過去菊門だけは慶一郎が触れる事を拒んでいた。だが情交の最中、何かの拍子で触れてしまうと敏感に反応していた。感じやすいが故拒んでいたのだろう。
 実際事に及ぶと手荒にしているにもかかわらず涙をみせ泣き叫んでいたが途中より嬌声が漏れてきた。
「こんな……ああっ……嫌だ……後ろで……あ゛、あ、あっ」
 慶一郎としても味わった事のない締め付けを体験した。すぐにでも精を放ってしまいたい衝動を抑え、空いた手を香織のおさねに当ていじり回す。趣の異なる二点責めに香織は「ひっ」と一言甲高い声を上げて、ぐったりと動かなくなった。
 すると今まで体内にこもっていた常世の気が急に感じられなくなる。香織の言った通り意識を失ったため常世の気が入り込まなくなったようだ。
「香織殿……すまぬ」
 無用の衝撃を避け、丁寧に玉茎を引き抜くと慶一郎は立ち上がり近くに置かれていた刀に手をかける。そのまま刀を引き抜くと部屋の隅にいたナギに斬りかかった。
「おのれ……」
 袈裟懸けに斬るがナギはひらりと飛び、避けられる。そのまま障子に向かうと部屋の外に逃げ出した。慶一郎も廊下まで追うがすぐに手の届かぬ場所まで逃げられ、姿は闇夜に溶けた。
 深追いを避けた慶一郎は部屋に戻ると着物を正し香織の介抱に専念した。




 すべての後始末をつけた後、香織の意識が戻るまで慶一郎はその場にいた。
 子の刻が回った頃であろうか。香織は目を覚ました。意識を取り戻した後も常世の意識に捕らわれているのかどうか懸念していたがどうやら心配ないようだ。
「慶一郎……殿……」
 呟いた途端香織は顔を背けた。
「香織殿……体はどうです」
 慶一郎は優しくいたわるが香織は顔を背けたままだった。
「私の事など……それより慶一郎殿が……」
 顔を合わせられぬらしい。
「何処も悪くありません。先ほどの事は……気になさらぬように」
 こう言っても気にするで有ろう事は予想していたがやはりその通りであった。
「そのような事簡単にはできぬ。この都を守る任を帯びた私が、事もあろうか常世の手足になろうなどと。あまつさえ……慶一郎殿にまで」
 そういった途端おし黙った。
 慶一郎は手を取るとそっと握る。
「拙者はこうして無事です。だからもうよいでしょう。それに……今思えば大胆な香織殿もなかなか良かったですよ。普段言ってもらえない事も伺えましたし」
 力いっぱい裾をぎゅうと握り締めて反論する。
「あれは常世に操られてっ……その……もうあのような真似はせぬ!」
 恥ずかしさで顔を赤くする香織を微笑ましく思いながら慶一郎はさらに言葉を続けた。 
「残念です。緊縛はともかく、滅多にできぬ体験もさせて頂いたというのに。あんなに敏感だとは思いもよりませんでした」
 香織は首筋まで紅潮させ、もう聞きたくないというように首を振る。うう、と唸った後に
「わかった。もう気にしない。だから……これ以上言わないで……ほしい」
 香織の懇願に慶一郎は承諾した。それで安心したのか慶一郎に抱きつくと「すまぬ」と一言呟いた。「ええ」慶一郎が抱き返す。
 二人とも疲労困憊であるため、今日はこのままここで泊まる事にした。



 翌朝、香織は身支度を調えた後、慶一郎に比度の始まりである常世の者とあった時の事を語り出した。

 洛外を探索していたときのことだ。木立の側に人が立っていた。何者か、と誰何すると男がこちらを振り向いた。
 その目を見た時あまりにも冷たい目をしていたので一目見て常人ではない事は分かった。
 とっさに刀に手を伸ばし近寄ろうとした時に頭上からあの梟が襲いかかってきたのだ。
 頭に一撃を受けたらしくそこで意識が途絶えた。
 気が付けば一撃を受けた場所にそのまま倒れていた。違うのは梟が側にいて体中から私でない声が響く。その声にどうしても逆らうことができず慶一郎殿を罠にかけてしまった。
 
 そう言い終えた香織は今にも泣きそうであったが慶一郎が何か言葉をかける前にいつもの顔に戻った。
 慶一郎は香織より聞き出した洛外へ向かった。共に来たいという香織を押し止どめ一人でやって来た。食い下がる香織に
「もしも常世の者や梟がいたとして……また影響を受けぬとも限りませぬ」
といい、今日は屯所にて待つようにお願いすると渋い顔をしながら承諾した。
「気を抜かぬよう。手にしていた獲物は大振りのもの故すぐ見分けはつきましょう」
 その他にも思い出せる限りの特徴を慶一郎に伝えると香織は吉兆を後にした。
 うっそうと繁る木々を見渡すが常世の者に関するものは何も無い。
 一帯は人の住まいも皆無で近所のものに聞き込みすることもできない。
(やはり……既に立ち去ったか)
 探索を諦め慶一郎は洛外を後にする。
(それにしても香織殿に手を出すなど卑劣な……一刻も早く地獄門をどうにかせねば)
 慶一郎は決意を新たにした。




 慶一郎は気づかぬが、その姿を遥か頭上より金色の双眼が凝視していた。双眼の持ち主は木の枝に掴まっていたがやがて一声鳴くと飛び去った。


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ここで疑問になるのは気を失った香織に刹那は手を出したのかどうか。
それは基本的にあなたの心のなかで……(アンジェ風)

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