::: 作品紹介 :::

::: 2006/01/22 :::


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公式絵をみて思った短文。
雰囲気だけで書いている
 
 血しぶき舞う中同じ柄だが色違いの羽織を着た二人がそれぞれの得物を手に敵と対峙している。
 足下には幾人かの死骸がすでに転がり地面を埋めている。
 それが敵なのか、味方なのか……二人には判別する余裕は無かった。
 背中からの襲撃を避けるためにそれぞれ背中合わせに構える。真田は冷静になろうと息を整えようとする。敵陣の中、背中を預けられる人間がいて本当に良かった。震え立ちすくむ事もなくいられるのは鷲塚の存在が大きい。感謝の念は絶えないがそれを表すのはここを切り抜けてからに決めた。



 息の上がった真田をかばいつつ鷲塚はちらと真田の様子を伺った。幸いまだ、大きな傷は受けてないようだ。柄を握りしめる手がやけに白くうつる。いや、手だけではない、全身が淡く見えるのだ。そこかしこに飛び散った敵の鮮血がそうさせるのか。美しい。だがこのまま消えてしまいそうな感覚にとらわれた鷲塚は、そこに存在する事を確認するかのように声をかける。
「小次郎殿まだいけますか」
「ああ」
 いまだ息を整えつつある真田の返事は短い。皆には偽っているが、女の身故、体力はどうしても鷲塚に劣る。これ以上は無理ではと鷲塚は撤退を口にする。
「ここは小次郎殿だけでもお逃げ下さい」
「馬鹿な事をいうな」
 怒声混じりで反論を受けた鷲塚に真田はなおも言葉をぶつける。
「二人で生きて帰るのだ。できなくてもそうしろ。せめて……そうするようにしろ」
 無茶な事を言っているのだが、根底の心情を考え鷲塚の心は奮い立った。口元が不思議とあがる。
「承知しました」
 その言葉に安堵した真田は刀を構え直すと
「では、われら天然理心流、新撰組の本領を見せつけてやろう」
「ええ」 


 慶応三年某日 死者数十人をだしたこの騒動は生き残った者の心に深く刻まれる。
 だが歴史に記される事はなかった。 
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