::: 作品紹介 :::

::: 2006/02/11 :::


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フェチズムだけ抜き出したもの。
短いです。

 
「香織殿……止されよ……くぅ」
 慶一郎が堪えきれぬようにつぶやくが香織はいささかも止める気はなかった。
「その割に……随分と元気だな」
 香織の言葉にさしもの慶一郎にも戸惑いが浮かぶ。慶一郎と香織の睦み事は数多くあれど今回は趣が違った。
 先日、とあることで香織の承諾をとらず閨事に及ぼうとした事があった。実際には外に襲撃者がおり、その目を欺きながら獲物を渡そうとした結果であった。だが香織は「それならば普通に渡せばよい」と怒りを露にした。今思えば確かにそうなのだが、あの時はその方法しか思い浮かばず行動にうつした。無意識に香織と睦みたいという願望がそうさせたのかも知れなかったため、ろくな言い訳もできず今に至る。
 人の心を無下にした罰だ。慶一郎殿も何もできぬ立場を知るがいい。と言い張った香織は慶一郎に決して動かぬようにと命じた。慶一郎が星座をしつつ従うと、同じく座した香織はこともあろうか足を延ばし慶一郎の局部を袴越しに軽く踏んだ。
 面食らった慶一郎は止めるように懇願しようとするが、香織の怒気に気圧され黙っていた。
 慶一郎は男の証を足で弄ばれる事に多大なる屈辱を味わう。しかし、慶一郎の局部は外部からの刺激に敏感に反応し、その身を固くしていくのだった。それが屈辱に拍車をかけた。 
「足で責められても感じるのか」
 足首を使い、小刻みに振動を与えながら撫でつける。慶一郎は声にならぬ。
「どうした。この程度で音をあげる慶一郎殿ではあるまい」
 足での愛撫は手と違いひどくぎこちない。それが慶一郎には新鮮な刺激となって局部の隆起に一役買った。ひざの上に乗せた両手で握りこぶしを作り耐えている様を香織は細目で見ていた。ふと思いついたように慶一郎に近寄る。
「袴がきつくなったのか。なれば楽にしてやろう」
 香織は足を離した。慶一郎は責め苦が終わったものと胸をなでおろしたのもつかの間、香織は慶一郎の袴の紐を解き、褌に手をかけて局部を露にさせた。
「これ以上は……」
「何を言う。嫌がっていないではないか」
 香織の目線の先には慶一郎の局部があり、血管を浮かせて天を向いている。
 香織は再度足袋をつけた足先でつつく。充血した局部は固さも十分であった。香織は足の親指と人差し指を目一杯広げ、雁首をその間を挟む。そうしておいてから今度は根元にかけてゆっくりと足を下ろしていった。慶一郎は快感と屈辱で眉間にしわを寄せ小さく唸る。香織はさも楽しそうであった。妖艶な笑みを浮かべると足の甲や土踏まずを慶一郎の竿になすり付けた。艶やかに映る笑顔が今は憎らしいとさえ慶一郎は思った。
「恨めしそうに見ても無駄だ。だが……そうやって感情を顔に出す慶一郎殿もたまにはよいな」
 慶一郎は、香織の目まぐるしく動く唇を無言で睨む。紅に染まった唇は艶やかに動きながら、さらに言葉を紡いだ。
「ああ怖い怖い。だが足袋が汚れるほどに汁を滴らせておいて厭というても嘘にしか聞こえぬぞ。ふふ」
 香織の白い足袋にはくっきりと分かるほどの染みができていた。その事実が慶一郎に追い打ちをかける。
「ここまで腫らして……苦しいのなら出しても良いのだぞ。そうれ。そうれ」
 香織は局部の先端を足先で包むように押し付ける。
「香織殿っ……」
 忍耐の切れた慶一郎は小さく震わせると勢いよく精を放った。放たれた精は足袋の大部分と踝を汚すほどであった。
「くっ」
 促されたとはいえ、屈辱のまま精を放ったことにかぶりを振り、悔いる。
「無理強いされることの辛さ……分かっただろう?」
 そう言った香織からは既に怒りは見えず、どこか苦しそうであった。先日の件を思い出したのであろうか。
 身をもって知る羽目になった慶一郎は短く「はい」と答えた。
「ならば……この間のようなことは……以後無いように」
「承知」
 慶一郎の様子を見ながらしっかりと釘を刺した事で、十二分に気の済んだ香織に慶一郎は努めて平静に問う。
「ところで香織殿。先程は随分と嬉しげであったようですが……」
「そんなことはない。……いや、慶一郎殿の百面相が見られたのは確かに面白かったと言えばそうだが……」
「本当にそれだけですか」
 慶一郎は香織の顔をのぞき込む。香織の顔には動揺のかけらも無かった。だが慶一郎には長年の付き合いでその無表情さが本心ではない時のものだと分かっている。
 慶一郎が無言で香織の瞳を見続けると、香織は顔を横にそむけた。
「やはり……楽しんでいましたね」
「仕方が無いではないか。あんなに表情をかえる慶一郎殿などそうめったに見られないのだぞ」
「ええ、見せまいとしております故。しかし……香織殿も人が悪くなりましたな」
 慶一郎はしみじみ呟いた。そして何事か思いついたらしく、真顔で告げた。
「香織殿。世の理には道があります」
 言葉の後に慶一郎は香織を押し倒した。
「慶一郎殿!?」
「さきほどの行い、罰にしてはいささか道に外れていませぬか。なればその報い、今ここで受けて頂きましょう。何心配はありません。今日一晩虐げられた拙者と閨を共にするだけです」
 慶一郎はここで言葉を区切り珍しく口端を上に上げた。
「……ただし拙者の気が済むまで。まあ明け方まで付き合って頂ければ気も収まりましょう」
 その言葉を聞いた香織は慶一郎と真逆の顔をした。
 


 その日一番鶏の鳴くころまで女人の艶声は止むことがなかった。


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