::: アウラサイド :::

::: 覚えてない  :::


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某掲示板に載せた物
 
「今日もご苦労様」
 いつものように夕方になると私の家まで飛んできてくれるメモリーバードに挨拶をする。
 ゼットさんのお陰でこの町に再度結界が張られ、魔物が出なくなった頃から日記としてメモリーバードに一日のことを話すのが私の日課になった。
 彼の専用席となった窓際に餌と水を置くと、早速今日の出来事を話し始める。



 今日は久しぶりにゼットさんがこの町に来てくれた日だったの。
 いつもの用に陽気に話しかけてきてくれるゼットさんの声を聞くととても嬉しかった。
 だけど、今までには感じた事の無いだるそうな口調も時々聞こえてきたの。つい心配になって
「ゼットさん……もしかして今の用事って大変なことなんですか?」
 と聞くと、
「ふっ! このオレに大変なことなんてナーッシング!
 だがしかし今の作業は一日でできるような代物でもないことも確か。
そこをどうにかするのがオレの凄いところだね。
 ほらよくいうじゃない? 千里の道も一里塚。小さなことからこつこつと。
 今はつらい道があろうとも、泣き言なんていいません。だって男の子だもん。
 だけど体は正直なんだなぁ。
 人生福祉事業をしているとさすがのオレもちょっぴりお疲れ気味なわけさ」
「……やっぱり少しお疲れなんですね」
 その言葉を聴いて私、ゼットさんにはいっぱい助けてもらったし、今では大切なお友達だから元気になってほしいって思ったの。
「ゼットさん。私にできることは無いですか? 一生懸命させてもらいます」
「その言葉にオレ感謝感激。世の中の皆様オレ小さな幸せ踏みしめてます。
 が、心配は無用。時代は今エコロジー。
 このオレ専用いろんなことにも使えてあら便利、
 ゆりかごから墓場までオレとお前は一心同体棒
 −略して『元気棒』を用いれば元気回復間違いなしッ!
 この棒を擦るとあら不思議、自家発電でみるみる力がわいてくる(オレだけ)
 今ならお買い得、専用エネルギー補充用フゾクボール2つをお付けします(オレだけ)
 あらいやん。これは使わなくちゃ。キュッキュッとねッ!!
 という風にするから大丈夫だぜ!!」
 そういつものように堂々といわれたの。だから私ゼットさんの手を握ってお願いしたの。
「そんな便利なものが世の中にはあるんですね。わかりました! 
 私も手伝わせてください!!」
 
 一瞬手がビクリとなったの。私は何かいけないことでも言ったのかと心配になったけど少しちがったみたい。
「んもう。オレは今世界中のだれ〜よりきっと!! 幸せ者です。ウィナーという言葉はオレのためにあるッ。
 しかしこれは基本的にオレが丹精込めて一期一会の心境でいたしますので、アウラちゃんには……」
「私にはできないものなのですか?」
「いえいえ滅相もございません。
 本音いっちゃうとー。とーっても嬉しいんだ。
 た、ただ……オレなんかにそこまで……」
「なんかじゃありません。私はゼットさんを大切な人だと思ってます。私にできることはほんの少ししかありませんけど……それでもゼットさんのために何かしたいんです。
 ……こんな気持ちゼットさんには迷惑ですか?」
「いえ全然!! 
 …………
 ………………
 ……………………(ああッ赤い三角形が今ここに一枚!! よいこは真似しちゃだめだぞッ)
 本当にッ! いいんだねッ!!」
「はい。まかせてください」


 ゼットさんは私を椅子に座らせるとさっき元気棒と言っていたものを顔の位置で触らせてくれたの。
 棒というから木や金属の硬いものを考えていたのだけど、握ったものはそれよりもずっと柔らかくて、温かいものだったの。そのことをゼットさんに言うと
「はっはっは。今はそうだけど太さも硬さも使用時には通常の3倍になるんだぜッ(当社比)
 今日はアウラちゃんが手伝ってくれるからこちとら待ちきれねぇぜとばかりに早々、隆々にエキサイトしてるさ!」
「そうなんですか……お役に立ててうれしいです」
 ゼットさんの言われたとおり少しずつさすっているとどんどん硬くなっていくのが手の感触を通じてわかったの。
 一生懸命にしていると少しうわずったゼットさんの声がしたの。
「そ、その……取り扱い説明書(全3ページ保証書付)の使い方中級編に『さらに出力を上げたい場合は適度な力でにぎってください。その際上下に擦り合わせると相乗効果をもたらします』とありました」
「頑張りますッ」
 言われたとおりにすると更に熱と硬さが増えていったの。
「ゼットさん。もしかして硬くなればなるほど元気になっていくものなのですか?」
「アウラちゃん君は天才!? まったく持ってその通りッ!!」
 ゼットさんにほめられた私は嬉しくなってもっと一生懸命擦るようにしたの。元気棒はますます硬くなってきて片手では握ることができなくなったので両手でするようにしたわ。
 ゼットさんはため息とか堪える様なことを時折つぶやいていたからまた元気がなくなったのかと思って聞いてみたら、これは使用時特有の声援だといっていたかな。
 そういえばいつまですればいいのかなと思い始めていた時いきなり苦しそうな機械が喋った様な声がしたの
「今回のご使用誠にありがとうございます。
 本日の充電はこれで完了いたします。
 なお完了時には液体が飛び出ることとなっておりますが、万が一手などに付着しても影響はございませんのでご安心ください。
 それではカウントダウンを始めます。3・2・1……」
 ゼロになると同時に棒が震えたわ。すぐ後に手に何かついた感触があった。
 ゼットさんがすぐに手の何かをふき取ってくれたし、これがさっき言っていた液体なのかなってあまり気にしなかった。
「いやぁ。今回幸か不幸か充電までの時間が大幅短縮! 
 もう、世界新記録狙えちゃうね。ってぐらいっす(ねらいたくないけど)
 この偉業をなしとげる事ができたのはこれもすべてアウラちゃんのお陰だぜ」
「これで……元気になられたのなら私もした甲斐がありました。元気になりましたか?」
「モチのロンよッ!」
「よかった。
 ……それはいいんですが、
 さっきのカウントダウンを始めた声はゼットさんの声に似ていたような……」
「(ギクッ)やだなぁ。
 さっきのは棒に内蔵してある、お知らせ君2号の声だぜ。
 最近のはファジー機能付ッ! 毎回台詞が違う優れもの!!」
「そうなんですか? 最近のものはすごいんですね」
「うむッ!!」
 そう言い切ったゼットさんの声はどこまでも元気で私を愉快にさせてくれるいつものゼットさんの声だったの。

 その後はいつもの様にゼットさんのお話をして。夜もふけた頃に
「いやぁ。今日はいろいろとごっつぁんでした。
 本当ありがとうなッ!
 ……
 また……お願いしてもいいかな?」
「ええ。私に任せてください。次はもっと頑張りますッ!」
「いゃあっほぅー!!」
 なんだか凄い喜んでくれたから私もつられて嬉しくなったわ。
 それからすぐにゼットさんは帰っていったけど、今度はもっとたくさん来るようにするって言ってた。
 私も楽しみにしてます。ゼットさん……
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